富山県と石川県の県境に位置する倶利伽羅峠。 石川県津幡町「倶利伽羅公園」には、奈良時代の歌人『大伴家持(おおとものやかもち)』が越中守の任期を終えて都へ戻る際、同僚の『大伴池主(おおとものいけぬし)』らが見送った歌となる、歌碑が設置されている。 本記事では、「砺波山手向の神の歌」の歴史的背景を解説するとともに、手向神社や倶利伽羅峠との関係についても紹介。 万葉集や大伴家持、越中の古代史に興味のある方はぜひご覧ください。

1.万葉集巻17、大伴池主と砺波山手向の神の歌

1.1 「砺波山手向の神の歌」

「あをによし奈良を来離れ天離る鄙にはあれど」から始まる和歌。
これは、746年(天平18)、越中守であった『大伴家持(おおとものやかもち)』が任期を終えて都へ戻る際、同僚の『大伴池主(おおとものいけぬし)』らが見送った歌である。
『大伴家持』は、奈良時代に越中守として越中国に赴任した。
現在は公卿としてよりは「歌人」として有名であり、『万葉集』に合計473首が収められている。
一方『大伴池主』は、家持が越中守として赴任していた頃、越中国の役人として仕えていた。
二人は上司と部下という関係のみあらず、和歌を通じで非常に親しい間柄だったことが『万葉集』から伺える。
この和歌は任期を終えた家持に、池主が京への旅の安全を祈った送別の儀礼であった。
京から「中国(※3.で解説)」である越中下向の想い、倶利伽羅峠が難道であったことも想像出来よう。
また、手向けの神は、手向神社(たむけじんじゃ)の前身を指す。

1.2 「砺波山手向の神の歌」詳細

以下、「万葉百科 奈良県立万葉文化館」より引用
あをによし奈良を来離れ天離る鄙にはあれど我が背子を見つつし居れば思ひ遣ることもありしを大君の命恐み食す国の事取り持ちて若草の足結たづくり群鳥の朝立ち去なば後れたる我や悲しき旅に行く君かも恋ひむ思ふそら安くあらねば嘆かくを留めもかねて見渡せば卯の花山のほととぎす音のみし泣かゆ朝霧の乱るる心言に出でて言はばゆゆしみ砺波山手向の神に幣奉り我が乞ひ祷まくはしけやし君がただかをま幸くもありたもとほり月立たば時もかはさずなでしこが花の盛りに相見しめとそ

1.3 歌碑の所在地

□ 倶利伽羅公園内
  石川県河北郡津幡町と富山県小矢部市の県境にある倶利伽羅峠
  津幡町側の案内では「3基の万葉歌碑」として紹介

2.大伴池主

大伴池主(おおとものいけぬし)は、奈良時代の官人であるが、大伴家持と同様に現在においては「歌人」として有名である。
『万葉集』にも多くの歌を残し、越中掾(えっちゅうのじょう)の時代にて大伴家持と親しく交流したことで知られる。

3.律令制における国力区分と遠近区分

689年頃に『高志国(こしのくに)』が「高志道前(こしのみちのくち)」・「高志道中(こしのみちなか)」・「高志道後(こしのみちのしり)」に分割される。


越前国
689年以降に頃に「高志道前(こしのみちのくち)」から「高志前」と表記され、大宝律令後に『越前』と記される。
現在の石川県と、福井県の北部を含み、718年(養老2)能登国が分離した。
律令制における国力では「大国」。距離では「中国」として定められる。

越中国
689年以降に頃に「高志道中(こしのみちなか))」から「高志中」と表記され、大宝律令後に『越中』と記される。
現在の富山県のほぼ全土を含み、718年(養老2)越前国から分離した能登国を741年(天平13)に併合するが、757年(天平宝字元)能登国は越中国から再び分立した。
律令制における国力では「上国」。距離では「中国」として定められる。

越後国
689年以降に頃に「高志道後(こしのみちのしり)」から「高志後」と表記され、大宝律令後に越中国から親不知以東を譲り受け『越後』と記される。
日本海側である現在の山形県、秋田県との関係が濃く、蝦夷対策としての歴史が刻まれる。
律令制における国力では「上国」。距離では「遠国」として定められる。


能登国
718年(養老2)、越前国から分離し、741年(天平13)に越中国に併合される。
その後757年(天平宝字元)、再び分離し能登国となる。
律令制における国力では「中国」。距離では「中国」として定められる。

加賀国
718年(養老2)の能登国分離後、823年(弘仁14)に越前国から江沼郡と加賀郡を割いて加賀国が分離した。
加賀国は、令制国の中で最後に建てられた国である。
当時の加賀地区は、越前国府から遠く往還に不便であり、郡司や郷長が不法を働いても民が訴えることが出来ず、
また国司の巡検も難しいといったことが加賀国の誕生となった。
律令制における国力では「上国」。距離では「中国」として定められる。


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